おうち工作の本場は、都市ではなく田舎にある
「おうち工作」ワークショップは、都市から離れて西伊豆の小さな港のある集落の友人、ヨアン・モローさんの家を拠点に行いました。これには理由があります。
「おうち工作」の目指す方向の一つを、彼の家づくりが確実に示してくれているからです。
かつては廃屋同然だったこの家を、2年以上の時間をじっくりとかけて、持ち前のアイディアを技術でコツコツと修理、リメイクをしたヨアンさん。シロアリに食われた柱を修復し、屋根を吹き替え、放置され汚れていた部分をきれいに掃除し続け、壁を塗り直し…といった気の遠くなるような作業をゆっくりと続けて、温かみのある木の質感と、思わず目を引く独創的な仕掛けや装飾が調和した魅力的なゲストハウスへに生まれ変わりました。
ヨアンさんが、効率やコスパ、タイパを考えていたら、こんな家づくりはしないでしょう。ではなんのために? 「おうち工作」のもっとも大事な”心”を確認するために、この場所ではじまりのワークショップを行いました。


ドリームすること
ヨアンさんがつくってきた家をまずはみんなで見学。いたるところに遊び心が炸裂しています。その多くが、海での漂着物や近所の人にもらった素材をメインにして作られていることに、参加者一同が気づきます。海のブイでつくったランプシェード、前の家の壁土を再利用してつくった薪ストーブの壁、自動で閉まるように工夫した入口のドアは、だれかにもらったオモリが重要な役割を果たしています。そのどれもが美しく、安っぽさは微塵もありません。どうしたらこんなふうに、家づくりができるんでしょう?
「ドリームすることが大事」とヨアンさんが言います。漂着物やもらったモノたちが、どこでどんなふうに活躍するのか、どう組み合わせたら楽しいか、モノから夢を描いてみることが大切だと。「そのためにはドリームする時間も必要だね」、と教えてくれました。
渚にて
続いて、モノを探しに近くの海に向かいます。快晴で富士山がまっすぐ見える海岸を歩きながら、みんなで使えそうなものを探します。流木、石、鉄板やプラの部品。漁具や椰子の実まで、いろいろなものを拾いました。「最初は『ただのゴミ』にしか見えなかったけど、だんだん『使えそうな素材』に見えてきて面白い。しかもけっこうたくさんある(笑)」と参加者の一人が言います。両手にたくさんの、これからなにになるかわからないモノたちを抱えて、みんなで戻って、棚をつくりはじめます。
さて、地面の上に集めたモノたちを並べていきます。どれが棚になりそうかの試行錯誤です。「ひとりでやっていたら思いつかないような組み合わせの妙がいろいろと出てきて楽しい」とはある参加者の言葉。たしかに、いろいろな人の視点で集めた素材を、いろいろな人の視点で組み合わせてみると、思いもしなかった棚が爆誕していきます。流木を半分にしてフックもつくりました。
